路線バス運転手の仕事内容は?一日の流れからやりがい、給料まで解説!
通勤や通学、病院の行き帰りや外出先での短距離移動など、私たちはさまざまな場面で路線バスに乗る機会があります。路線バスは人々の生活を支え、社会にとってなくてはならない存在です。
この記事では、路線バス運転手の仕事内容について解説します。一日の流れややりがい、給料など、路線バス運転手になるために必要な情報について解説するので、路線バス運転手に興味がある人はぜひ参考にしてください。
路線バス運転手の仕事とは?
路線バスは、主に日常生活の足として地域の人々に利用されるバスです。主に高速道路を走行する高速バスとは違い一般道を走行することが多く、また修学旅行・団体ツアーなどの足となる観光バスとは違い、不特定多数の乗客を目的地まで送り届ける役割があります。
路線バス運転手は、路線バスを運転し、安全にかつ運行時刻を守って乗客を目的地まで運ぶのが仕事です。一般道を走行するため、歩行者や自転車に気をつけながら、狭い道を通行することもあります。また、運行ダイヤ通りにバスを運行させる必要があるため、高度な運転技術が必要です。
全国に約150万人。それでも人手不足
路線バス運転手は、全国に150万3,760人、東京だけでも11万4,720人います。一見多いように見受けられますが、それでも人材不足の状況が続いています。路線バス運転手の平均年齢は全国平均で53歳と高齢化が進んでいるため、若年層の運転手が求められている現状です。
しかし、平均年齢が高いということは高齢になっても働ける職場ともいえるため、年齢を重ねても安定した収入が期待できます。*1
路線バス運転手の一日
ここからは一日の流れを解説します。
路線バス運転手の一日は、以下のような流れで進みます。
- 出勤してアルコールや体調チェックなどを行う
- 乗車前に車両の点検業務
- いざ乗車!安全運転で目的地まで乗客を運ぶ
- 安全運転のためにも休憩も重要
- 運行後の車両点検など
それぞれの業務を詳しく解説します。
出勤してアルコールや体調チェックなどを行う
出勤して最初に行うことは運行管理者への出勤報告です。出勤報告を済ませると、運転時間表で当日の運行予定と運転する車両を確認します。その後、アルコール検知器での飲酒検知や運転免許証の携帯、体調などの確認も行われます。当然、アルコールが検出されたり、病気や疲労などの理由から安全運転に支障をきたす恐れがあると判断されると、その日の運転はできません。
これらの項目を全て満たし、運行してよいと判断されると、運行管理者から車両の鍵や金庫、社用携帯電話などが渡され、運転する車両へ移動します。運転する車両へ移動すると、金庫を取り付け、車両の点検をし、安全に運転できる状態であるのかを確認します。
乗車前に車両の点検業務
乗車前に行う車両の点検業務は毎日行う業務であるため、日常点検と呼ばれることもあります。日常点検では、50以上の項目をチェックし、安全運行に問題がないかをチェックします。タイヤの空気圧やタイヤに亀裂や破損がないかなどの確認がチェック項目の一例です。
他には、エンジンオイルや燃料の油量のチェック、ブレーキが利くかどうかのチェック、ランプの点滅具合やランプの汚れ・損傷のチェック、ドアが正常に開閉するかのチェックなどを行います。車両点検を終えると、チェックシートへの記入を行います。
チェックシートの記入が終わると、次は始業点呼です。運行管理者と運行上に留意する点などを確認したうえで、指差呼称を行います。指差呼称が終わると、運転時間表を受け取り実際に乗車をすることになります。
いざ乗車!安全運転で目的地まで乗客を運ぶ
乗車したら、運行管理者から受け取った運転時間表のとおりにバスを運行します。停留所に停車すると乗降扉の開閉はもちろん、運賃を乗客から受領したり回数券やバスカードの発売を行ったりします。乗客の乗降が終了し、車内の安全が確認できたら乗降扉を閉め、バスを発進させます。
走行時は次の停留所の案内をしたり、交差点に進入する際に立っている乗客に向けた注意喚起をするなどして、バスが安全に運行できるように、また乗客を目的地まで届けられるようにわかりやすい案内を心がけます。
場合によっては乗客にバスの行き先や乗り換え場所、所要時間等の案内をすることもあります。また、バス停付近の地理についての案内を行うこともあるので、わかる範囲で地域のことについて勉強しておくとよいでしょう。
安全運転のためにも休憩も重要
路線バスの安全運転のために、休憩をとることも重要です。路線バス運転手は、勤務時間内に運転と休憩を繰り返しています。1時間半から3時間ほど運転したら営業所の休憩室で休憩を挟み、場合によっては休憩時間に昼食や夕食を取ることもあります。女性専用の休憩室が設けられている場合もあるので、女性の運転手でも安心して休憩できるでしょう。
バスは通勤・通学の時間帯は運行本数が多く、日中や早朝・夜間は運行本数が少なくなるなど時間帯によって稼働率が変わるため、休憩時間は一定ではありません。しかし、各バス会社で工夫をして休憩時間を設け、長時間労働による安全性の低下を予防しています。
運行後の車両点検など
所定の運行が終了すると、車内に乗客が残っていないかを確認し、バスを営業所まで戻します。営業所に戻した後は、バスを所定の位置に格納しタイヤに輪止めをします。その後もう一度車内および車外を点検し、忘れ物の有無や車体の傷・汚れ、車体の異常の有無を確認したらその日の運行は終了です。
運行後は、勤務中に飲酒をしていないかを確認するためのアルコールチェックを行い、運転日誌を記入します。運転日誌を記入したら運行管理者と終了点呼を行い、その日の状況を報告します。そして、運転前に渡された鍵や社用携帯電話などを運行管理者に返却して、業務は終了です。
路線バス運転手のやりがいとは?
ここからは路線バス運転手のやりがいについて解説します。
大きく分けると、路線バス運転手のやりがいは、以下の5つに分けられます。
- バスは重要な社会インフラ
- 正社員がほとんどで安定した仕事
- ダイバーシティのある職場
- 人間関係の悩みが少ない
- 残業などが少なく、仕事後の予定が立てやすい
それぞれの内容について、以下で詳しく見ていきましょう。
バスは重要な社会インフラ
バスは、乗客を目的地まで運ぶ重要な社会インフラとしての役割があります。通勤や通学の足として欠かせないうえ、自動車免許を持っていない人にとってはなくてはならない存在です。
日々乗客を見ているとそうした役割を担っていると感じ、それがやりがいになるでしょう。自分の仕事に誇りを持つことができればより一層仕事を楽しむことができ、充実した生活を送ることにもつながるでしょう。
正社員がほとんどで安定した仕事
路線バス運転手は正社員がほとんどで、安定した仕事である点もやりがいを感じる部分です。路線バス運転手は、人手不足の業界であるため、特に若手は重宝される傾向にあります。そのため、正社員として採用する会社がほとんどであり、路線バス含むバスの運転手は94.8%が正社員です。人口減少が進む日本ではありますが、公共交通機関として都市部でも地方でもバスの需要は 依然としてあるため、安定した仕事だといえます。*1
ダイバーシティのある職場
路線バス運行会社はダイバーシティのある職場でもあります。新卒で路線バス運転手になる人もいますが、転職先として選ぶ人も多くいます。路線バスは平均年齢が高い職場ではありますが、荷物の積み下ろしなどをする必要がなく、未経験でもやる気があれば採用してもらいやすいことが、転職先として選ばれる理由です。
そのため、さまざまな背景を持った運転手がおり、ダイバーシティのある職場だといえるでしょう。これまで会ったことがないタイプの人々と触れ合うことで、視野が広がるかもしれません。
人間関係の悩みが少ない
人間関係の悩みが少ないこともやりがいの一つです。オフィスでの内勤業務だと、毎日決まった人と同じ空間で仕事をすることになるため、人間関係で悩む人もいます。しかし、路線バス運転手は乗車をしたら職場の人に会うことはありません。始業・終業や休憩時間には同僚と会うことはありますが、乗車時間は基本的に一人です。
残業などが少なく、仕事後の予定が立てやすい
路線バス運転手は、残業などが少なく仕事後の予定も立てやすい職業です。路線バスは基本的に決められたダイヤ通りに運行し、シフトも事前に決まっています。そのため、急な残業や休日出勤が発生することはほぼありません。
そのため、休日や仕事後にプライベートな用事を入れやすく、家族がいる場合などは家族との時間も大切にできるため、日常生活を充実させることが可能です。
路線バス運転手の給料は?
厚生労働省による職業情報提供サイト「jobtag」によると、路線バス運転手を含む「バス運転手」の平均給料は、全国平均で年収403.9万円となっています。これは日本の平均的な水準の給料です。
ただし、地域によって年収に差があり、東京は441.3万円、神奈川県は528.7万円などのように、大都市ほど多い傾向があります。*1
路線バス運転手に向いている人とは?
では、路線バス運転手に向いている人は、どんな人なのでしょうか。
主に、以下の2つのパターンに当てはまる人が路線バス運転手に向いていると言えます。
- 車の運転が得意な人
- ポジティブマインドな人
それぞれについて、詳しく解説します。
車の運転が得意な人
路線バス運転手に向いているのは、車の運転が得意な人です。路線バス運転手はもちろんバスを運転するため、車の運転が苦手な方には向いていません。一方、車の運転が得意な人や車の運転が好きな人にはうってつけの仕事です。
自家用車とは異なり、バスは大型の車であるため、バスの運転に慣れる必要はありますが、慣れてしまえば楽しく仕事ができるでしょう。ぜひ、車の運転が得意な人は路線バス運転手に挑戦してみてください。
ポジティブマインドな人
ポジティブマインドな人も路線バス運転手に向いています。路線バスを運転していると、やむを得ない事情でダイヤ通りに運行できず、遅延してしまうことがあります。乗客の乗降に時間がかかったり道路が混雑していたりするなど、自分では対処のしようがないことがほとんどです。
そこで、自分を責めすぎずにポジティブマインドを維持できる人は路線バス運転手に向いています。
路線バス運転手になるためには?
路線バス運転手になるには学歴は不問ですが、高卒が75.9%となっています*1。また、路線バス運転手になるためには、大型第二種自動車運転免許(大型二種)が必要です。大型第二種は21歳以上で、所定の免許を取得しその運転経験が通算3年以上(免停期間除く)あることが求められます。
ただし、2022年5月13日からこの受験資格が緩和され、「受験資格特例教習」を修了することで、19歳以上・免許(普通免許含む)を受けていた期間が1年以上でも受験が可能となります。
大型二種免許は厚生労働省による「教育訓練給付制度」の対象となっています。この制度を利用することで、受講費用の40%(最大20万円)の助成金を受け取ることができるので、活用してみるとよいでしょう。
路線バス運転手の仕事内容は魅力的!
路線バス運転手の仕事は安定しており、人間関係における悩みも少ない仕事であるため、とても魅力的な仕事です。車の運転が得意な人やポジティブマインドを持っている人には特におすすめです。
学歴は必要なく、入社後に免許を取得できる会社も増えているため、未経験でも仕事をスタートできます。社会の重要なインフラとしての役割を果たす路線バス運転手をぜひ目指してみましょう。
文責 働きやすい職場のミカタ編集部
*1出所)jobtag「路線バス運転手」
URL:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/186
*2出所)厚生労働省「教育訓練給付制度」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html