観光バスとは?観光バスの種類、仕事内容ややりがいなど解説します

    バスのなかでも、主に団体ツアーなどで利用されるバスを観光バスといいます。多くの人の旅行をサポートする観光バス運転手は、他のバス運転手にはない魅力があり、人気も高いです。

    この記事では観光バスの種類や仕事内容、メリットなどを解説します。観光バスドライバーに興味を持っている人は、この記事を参考にして自分に向いている仕事かどうか見極めてみましょう。

    観光バス運転手とは?

    観光バス運転手は、団体ツアーで利用される貸切観光バスや、観光地で人気スポットを巡る定期観光バスなどを運転する運転手のことです。一般的には観光バスというと貸切観光バスを指しますが、場合によっては定期観光バスが含まれることもあります。

    乗客を目的地に運ぶことが仕事ですが、景色や車内の雰囲気を楽しんでもらえるように意識しながら、旅の思い出づくりをサポートすることも重要です。

    観光バスを含めたバス運転手として働いている人は全国に144万5,820人いて、平均年齢は53歳です。契約社員やアルバイトとして働いている人もいますが、バス運転手の88.2%は正社員として働いていて、全国での平均年収は403.9万円となっています。*1

    観光バスの種類

    観光バスは大きく分けて貸切観光バスと定期観光バスの2種類です。それぞれの特徴を見てみましょう。

    貸切観光バス

    貸切観光バスは、ツアー会社が募集している募集型企画旅行のほか、修学旅行や遠足など学校の団体旅行で利用されるバスを指しています。観光バスといえば貸切観光バスを指すことがほとんどです。

    貸切観光バスの運転手は、バスガイドや添乗員とともに打ち合わせを行い、旅程に沿って観光スポットやレストランなどを回れるようにバスを運行します。ツアー会社が募集している団体ツアーの場合は一定期間同じルートを運行することもありますが、学校の修学旅行の場合は担当する学校ごとに旅程が違うので、毎日異なるルートを運行します。

    定期観光バス

    定期観光バスは路線バスの一種で、乗客が一人でも運行します。多くの場合は観光バスというと貸切観光バスを指しますが、定期観光バスを含める場合もありますので、求人を見る際は仕事内容を確認しましょう。

    定期観光バスは通常の路線バスのようにルートや運行時間が決まっていて、運賃も路線バスと同等です。観光地によっては無料で主要スポットを巡る定期観光バスもあります。

    貸切観光バスは運行する際に届出は必要ありませんが、定期観光バスの場合は新設・廃止する際などに地方運輸局に届出をしなければなりません。

    観光バスの大きさとバリエーション

    観光バスというと大型バスをイメージする方が多いかもしれませんが、中型や小型の観光バスもあります。また、大型・中型・小型のそれぞれにバリエーションがありますので、どのような種類があるのか知っておきましょう。*2

    大型バス

    大型バスは大型車の一種で、車両の全長が9m以上12m未満、もしくは旅客座席数が50名以上のバスのことです。代表的な大型バスには、「ダブルデッカー」「スーパーハイデッカー」「ハイデッカー」「大型一般車」があります。

    • ダブルデッカー:旅客座席数49〜72名。2階建てで素晴らしい眺望が楽しめる。1階部分がサロンやバーになっているものもある。2010年頃に国内生産が中止されたため、現在では希少なタイプ。
    • スーパーハイデッカー:旅客座席数45〜55名。運転席を低くし、キャビンのフロアをフロントガラスまで伸ばしている中二階バスのため、視界も広い。
    • ハイデッカー:旅客座席数45〜51名。一般車よりも車高やデッキが高く、床下に荷物を収納するスペースが確保できる。観光バスに一番多いタイプの大型バス。
    • 大型一般車:旅客座席数41〜53名。一般的な大型バスで、車高はハイデッカーより低く、4列シートが多い。旅客座席数が多くリーズナブルに借りられる傾向にある。

    中型バス

    中型バスは中型車の一種で、全長が7〜9mもしくは、旅客座席数が30〜40名程度のものと定義されています。代表的な中型バスは「中型ハイデッカー」と「中型一般車」です。

    • 中型ハイデッカー:旅客座席数27〜35名。車両の全長は7〜9mと大型バスよりは小さいが、一般車より車高やデッキが高いため、景観が楽しめる客席となっている。
    • 中型一般車:旅客座席数27〜40名。大型一般車よりも小さいサイズで、中型ハイデッカーよりも車高やデッキが低い。高速バスに利用されることはほぼない。

    小型バス

    小型バスは小型車の一種で、全長の長さが7m以下かつ旅客座席数29名以下のものです。代表的な小型バスには「小型ハイデッカー」と「小型一般車」があります。

    • 小型ハイデッカー:旅客座席数25〜28名。車両の全長が7m以下と中型バスよりは小さいが、一般車より車高やデッキが高く、景観を楽しめる仕様になっている。
    • 小型一般車:旅客座席数22〜29名。マイクロバスと呼ばれることもある一般的な小型車。近距離の移動に向いている。価格がリーズナブルなため気軽に利用しやすい。

    観光バス運転手になるために必要な資格

    観光バスの運転手として働くためには大型第二種自動車運転免許が必要になります。第二種運転免許は乗客を乗せて運転手の仕事をするために必要な免許です。大型第二種自動車運転免許を取得するためには、大型第一種免許を持ち、21歳以上・3年以上の運転経験が求められます。ただし、大型免許は第一種・第二種ともに受験資格が緩和されており、受験資格特例教習を修了した場合、19歳以上・普通免許取得から1年以上で取得が可能です。*4

    観光バスの運転手として働くために必要な資格は大型第二種自動車運転免許のみで、学歴は不問です。しかし、まず路線バスや定期バスで経験を積んでから、観光バス運転手になるケースが多くなっています。会社によって異なりますが、一般的には3年以上実績を積み、無事故無違反で乗客からの評価が高い場合のみ、観光バスの運転手として働けます。

    未経験OKの観光バス運転手の求人が出ていることもありますが、この場合は新人研修を受けたのち、実地訓練を受けなければなりません。実地では観光バスの基本的な作業や道路事情、コースについて学習します。その後、まず簡単な短いコースから乗務を始め、経験を十分に積んでから複雑な道路や高速道路を走る観光バスを担当するのが一般的です。*3

    観光バス運転手の仕事内容

    観光バス運転手の仕事は、指示されたスケジュールに沿って観光スポットや食事をするレストラン、休憩場所などを回ることです。発着時間が決まっているため、時間や道路状況にも気をつけながら運行しなければなりません。

    また、ただバスを運転し乗客を運ぶだけでなく、旅を楽しんでもらえるように演出するのも大切な仕事です。乗客にとってはバスで移動している間も旅行の一部ですから、車内の雰囲気にも配慮したり、観光地周辺ではゆっくり走行して景観を楽しんでもらったりといった工夫が必要になります。

    会社によってはバスに軽微な故障が起きた場合、自分で修理しなければならないこともあります。

    観光バス運転手の一日

    観光バス運転手の一般的な一日の流れを解説します。一日の流れやどのような業務を任されるかは会社によって違いますが、参考までに見ていきましょう。

    出勤

    身だしなみや携行品を確認して出勤します。宿泊乗務を行う場合は、ホテルや乗務員宿泊場所からの出勤です。

    会社や指定場所に着いたら、同僚や添乗員、バスガイドなどに元気に挨拶して、気持ちよく一日をスタートさせましょう。

    アルコールチェック

    毎日出勤後にアルコールチェックが行われます。法律では呼気中のアルコール濃度が0.15mg未満であることを定めていますが、多くのバス会社はより厳格な規定を設けており、アルコール濃度が0.000mgでなければ乗務できないという規定になっている会社が多いです。

    観光バス運転手は飲酒禁止というわけではありませんが、仕事に影響しないように自制する必要があります。人によってアルコールの分解速度は異なりますが、仕事に穴を開けないためにも前夜の飲酒は控えた方がいいでしょう。また、宿泊乗務の場合は、宿泊地での飲酒が禁止されていることが多いようです。

    アルコールチェックと同時に、運転免許を携帯しているかの確認が行われる会社もあります。

    車両点検

    アルコールチェックに問題がなければ、勤務内容や担当車両を確認した上で、車両点検を行います。安全にバスを運転するためには、タイヤの空気圧やエンジン回りなどの点検が欠かせません。法定項目に従って、抜けがないよう念入りに点検します。車外の点検が終わったら、乗客が気持ちよく過ごせるよう車内の点検です。

    万が一点検で異常が見つかった場合は、管理者に報告して対応してもらいます。

    出庫点呼

    車両の点検を終えたら出庫点呼を受けます。管理者やバスガイドと一緒に、配車場所や時間、積み込み品、その日の重要事項の確認です。健康状態や身だしなみも、この時にチェックされます。

    スムーズに出庫点呼を終え、正確な運行をするためには、出庫点呼前にルートや発着時間、重要事項などを頭に入れておくことが重要です。

    出庫点呼が終わったら、配車場所に向けて出発します。

    配車場所に到着

    配車場所に到着したら、乗降口横に立って乗客を迎えます。余裕を持って出発し、必ず集合時間より前に到着しておかなければなりません。楽しい旅のスタートになるよう、笑顔で元気よく迎えましょう。

    乗客全員が乗り込んだら、挨拶をしてシートベルトの着用をお願いし、注意事項などを伝えます。全員の安全が確認できたら、いよいよ最初の目的地に向けて出発です。

    観光スポットを巡る

    指示されたルートに沿って、観光スポットを巡ります。走行中は道路状況に気をつけつつ、乗客が快適に過ごせるように配慮して運転しましょう。渋滞が予測される場合は、臨機応変に対応し、できる限りスケジュールに沿った運行ができるよう意識しなければなりません。

    目的とする観光スポットに着いたら、乗客より先にバスを降りて乗降口横で見送ります。バスガイドがいない場合は、乗客が席を立つ前に出発時間を伝えましょう。乗客が観光している間に車両の点検を行い、適宜休憩を取ります。出発時間より前にバスに戻って乗客を再び迎えたら、次の観光スポットに向けて出発です。

    移動中に立ち寄らない観光スポット周辺を走行する場合は、周囲の安全を確認した上でスピードを落とし、景観を楽しんでもらうこともあります。

    解散場所で乗客を降ろす

    全ての旅程が終了し解散場所に着いたら、乗客の見送りを行います。乗客よりも先に降りて、乗降口横で最後まで丁寧に挨拶しましょう。

    「ありがとう」「お疲れさま」と声をかけてもらえる見送りの瞬間は、観光バス運転手のやりがいが感じられる瞬間の一つです。「またこのバスに乗りたい」と思ってもらえるように、心を込めて見送りましょう。

    入庫して終業点呼

    乗客の見送りが終わったら会社に戻って入庫し、洗車や車内清掃、給油、車両の点検を行います。車内清掃時には忘れ物がないか隅々まで確認しましょう。翌日の乗客にも快適に乗ってもらえるよう、窓や座席も綺麗に掃除します。車両の点検をして異常があれば、終業点呼の際に必ず管理者に伝えるようにします。

    終業点呼ではその日の運行状況や発生したトラブル・忘れ物・改善点などを報告し、運転日報を提出します。運転日報は、乗客が観光している間に少しずつ記入しておくと退勤までがスムーズです。

    また、終業時にも再度アルコールチェックが行われます。

    明日の業務の確認

    貸切観光バスの場合、基本的には毎日運行するルートが変わります。翌日もスムーズな運行ができるよう、退勤前に翌日のコースや発着時間、重要事項などを確認しておきましょう。

    観光スポットは観光バスの進入経路が決まっているところや、道路が狭いところなどもあるので、ポイントを押さえておくことが大切です。わからないことがあれば指導運転士や先輩運転士にアドバイスをもらいましょう。

    翌日の業務確認が終わったら、一日が終了します。

    観光バス運転手のメリット

    観光バス運転手のメリットを知ると、より観光バス運転手に興味が沸くかもしれません。どのようなメリットがあるのか把握しておきましょう。

    ルーティーンワークになりにくい

    毎日同じ道を走る路線バスとは異なり、ルーティンワークになりにくいのが観光バス運転手のメリットです。

    会社や担当する業務によっても異なりますが、貸切観光バスの場合、毎日運行するルートが変わることも珍しくありません。旅行会社が販売している団体旅行の場合も、季節や企画内容によってルートが変わります。また、乗客も毎日違うため、日々新鮮な気持ちで仕事に取り組めるでしょう。

    さまざまなスポットを巡り、場合によっては宿泊することもあるため、自分自身も観光している気分で仕事ができます。乗客が食事をするタイミングで運転手も食事を取るので、ご当地グルメが堪能できるのも観光バス運転手の醍醐味です。

    ノルマがないので仕事に集中できる

    観光バスドライバーにはノルマがありません。乗客の少ない日があったとしても、給与に影響する心配がないので、仕事にしっかり集中できます。

    収入のプレッシャーは仕事にも影響してしまいがちです。ノルマがない観光バスドライバーなら、精神的な余裕を持てるため、安全運転や乗客に楽しんでもらうことを第一に考えて仕事ができるでしょう。

    安定して働ける

    観光バス運転手は、収入が安定しているのもメリットです。

    厚生労働省の調査によると、観光バス運転手を含めたバス運転手の88.2%は正社員であることがわかっています*1。また、バス運行会社の中には、福利厚生を充実させている会社も多くあります。バス運転手の平均年収は403.9万円ですが、大手のバス会社ならさらに高い給与をもらえることもありますし、経験を積めば昇給も期待できます。

    タクシーやトラックの運転手のように歩合給で給与が変動することもないので、安定して長く働けるでしょう。生活の安定を求めて、タクシーやトラックの運転手から、バス運転手に転向する人も少なくありません。

    観光バス運転手に向いている人

    最後に観光バス運転手に向いている人の特徴を紹介します。自分が観光バス運転手に向いているかチェックしながら読み進めてみてください。

    礼儀正しく乗客に対応できる人

    観光バス運転手は乗客と接することも仕事の一部ですから、礼儀正しく対応できる人が向いています。

    他の運転手業務と異なり、観光バス運転手は乗客に楽しい旅を提供することも大切な仕事です。忘れられない旅の思い出を作ってもらえるように、笑顔で元気に気持ちのいい対応を心がけなくてはなりません。

    また、旅を楽しんでもらえるような工夫ができるかどうかも重要なポイントです。バスガイドがいない場合は、観光地に関する豆知識を紹介したり、乗客を楽しませたりする演出をしなければならないこともあります。サービス精神やホスピタリティ精神にあふれた人、人と接することが好きな人も観光バス運転手に向いているといえるでしょう。

    運転技術のある人

    観光バス運転手を含め、バス運転手は安全運転ができることが重要な条件です。乗客を乗せて運転するバス運転手は、普段自動車を運転するときよりも高い技術が求められます。

    未経験や経験が浅い場合は簡単なルートから担当しますが、観光スポットは道が狭いことも多く、場所によっては山道や高速道路なども走行しなければなりません。アップダウンがある道やカーブのきつい山道でも、乗客が車酔いすることなく快適に過ごせるような運転技術が必要です。

    より快適に過ごしてもらえるように常に運転技術を磨く努力ができる人も、観光バス運転手に向いているでしょう。

    体力のある人

    体力がある人も観光バスの運転手に向いています。

    観光バスの運行ルートや発着時間はあらかじめ決まっているため、長時間労働を課せられることは少ないですが、場合によっては長距離移動もしなければなりません。乗客の観光中は休憩が取れるものの、点検や日報などやらなければならないことが多いのも事実です。出迎えや見送りなども行う必要があるため、その都度バスに乗ったり降りたりする必要もあります。

    また、宿泊乗務が発生することも少なくありません。どのようなスケジュールでも、常に集中力を維持して安全に配慮しながら仕事をやり遂げるには、体力が必要不可欠です。宿泊先で体調を崩してしまうと大きなトラブルになりますから、健康管理ができる人も観光バス運転手に向いています。

    観光バス運転手の仕事内容は魅力的

    この記事では観光バス運転手の仕事内容や必要な資格、観光バスの種類、観光バス運転手のメリットや向いている人について紹介しました。

    観光バス運転手は安全運転しながらも、乗客に配慮する必要がある大変な仕事ですが、ノルマがなく、安定した収入を期待できる仕事です。また、多くの人と関わり、旅行という忘れられない思い出作りに携われるという魅力もあります。運転手に興味を持っている方は、観光バス運転手も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

    文責:働きやすい職場のミカタ編集部

    *1

    出所)厚生労働省 職業情報提供サイト jobtag「観光バス運転手」

    https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/187

    *2

    出所)日本バス協会「種類別バスの図鑑[貸切観光バス]」

    URL:https://www.bus.or.jp/mini/zukan2.html

    *3

    出所)日本バス協会「バスのミニ知識 バスのお仕事」

    URL:https://www.bus.or.jp/mini/shigoto.html

    *4

    出所)新潟県ホームページ「運転免許受験の案内(受験資格、必要書類等)」

    URL:https://www.pref.niigata.lg.jp/site/kenkei/menkyo-siken-sikaku-sikaku.html